『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』、読了。 |
|
| 村上春樹の『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』という小説を読んだ。 以下、多少ネタバレもあるかもしれませんが、それはご勘弁を。 なるべくネタバレしないように。 では、以下。
この小説では、『対比』が肝になっている(と思う)。
ある一方の世界では、まったく唄も音楽もない世界で、 もう一方では音楽に満ち溢れている。(それは良くも悪くも、好きなものも嫌いなものも含めて) (音楽好きの村上春樹らしい手法だ。)
ある一方では完璧だけど閉塞的な世界。 もう一方では不完全で不条理だけど、自由で感情のある世界。
その二つの世界で繰り広げられる幽玄な物語。 知らず知らずのうちに引き込まれてしまう。 推理小説ではないけれども、だんだんと謎が解き明かされて、 終結に向かっていく様は、そこらの推理小説やSF小説よりもよっぽどおもしろい。 謎が解けてからも物語は続き、最後まで飽きさせない。 う~ん、うまい。さすがだ。 主人公の飄々とした生き方は、確かにハードボイルドだったけども、ほかのハードボイルド小説とはまた一風変わっていて、いたるところに村上春樹な雰囲気が醸し出されていた。 村上春樹もハードボイルドを書いてみたかったんだろうなぁ、とちょっとにやりとしてしまう感じだ。
登場する女の子も対照的だ。 ある女の子は食べても食べても太らない女の子で、 もう一人の女の子は無理矢理甘いものを食べて太った女の子。 一方は夫に死なれた未亡人で、 もう一人は17歳の若い女の子。 世の中は実に対比に満ち溢れている。 そしてそれは人の心の中にも。
ところで、村上春樹ほどセックスをさらりと書いてしまう作家も珍しいだろう。 セックスを描写する際には、二つのパターンに分かれる。 もう極端にエロく読者を興奮させるように煽って書くか、意識してその行為が見えないように隠して書くか。 でも村上春樹はそのどちらでもない。 実にあっさりと、生活の一部として書くのだ。 それは単なるコミュニケーションの一手段に過ぎない、と思わせるような。 挨拶したり、歯を磨いたりするのと同じレベルだ。 それはなんとも清清しいような感じを受ける。 ちょっと固い考えを持っている人(それが普通なのかもしれないけれど)が見ると、 「なんて不埒で軽薄なやつだ。セックスってのはもっと大事にするもんで軽軽しくやるものではない」 と思うだろう。 それも一理ある。 でも、違うのだ。 決して軽軽しくやっているわけではない。 そこにはちゃんとした愛情と責任と精神的感応がある。 だから、主人公は悩むし、拒否もする。 それも含めた上で、だ。 だからそれはいやらしくないし、小説の中にあって嫌な印象を与えない。 普通の作家が書いたらこうはいかないだろう。
なんかおもしろさがあんまり伝えられなかったなぁ。 うまく書けんかった。 ネタバレせんように書くってのは難しい。。。 まぁ、細かい理屈抜きに面白い話です。 読んでみれば、朝まで読んでしまう僕の気持ちがわかるはずです。 長いけど(笑)
おすすめです。
| |
|
4月19日(火)01:51 | トラックバック(1) | コメント(0) | 本 | 管理
|